大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和38年(ワ)1101号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕次に被告大東産業株式会社に賠償責任があるかについて検討する。

(1) まず被告坂本一爾は被告会社の使用人か、についてみよう。

<前略><証拠>を総合すると、被告坂本一衛は被告会社に傭われ建築のコンクリート基礎工事、コンクリート側溝築造工事等通常の所謂建築手伝職のする仕事に従事していたものであつて、ただ賃金を仕事の出来高に応じて支払を受けていたものと認められる。<証拠>中、本件事故当時被告坂本一衛は被告会社の行うコンクリート基礎工事、側溝工事等を請負つていたものであるとの部分があるが、弁論の全趣旨からみて信用することができない。前記<証拠>によると、被告坂本一衛は仕事道具は自分のものを使用し仕事材料はすべて被告会社のものを用いていたというのであつて、大工、左官、手伝あるいは理髪師等はたとえ定額の賃料で傭われる場合でも、道具類は自己のものを使用することは公智の事実であるし、賃金の支払方法についても仕事の出来高に応じてその額を決める場合もあるのであるから、被告坂本一衛が被告会社と独立した請負業として被告会社の工事を請負つたものであると認めることはできない。もつとも<証拠>によると被告会社においては被告坂本一衛には工事を外註したとして記載していることが認められるが、これを以つては未だ被告坂本一衛が独立した請負業者であつて被告会社の使用人でないとは認めえない。<中略>従つて被告坂本一衛は被告会社と雇傭関係に在つたものと認めなければならない。

(2) ところで<証拠>によると、前認定の被告会社所有の本件事故を惹起した貨物自動車は、当時被告会社が建築工事をしていた京都市東山区山科御陵久保町の工事現場に屋根および四囲をトタンで囲んだ仮設の車庫に格納され、その出入の扉は当時針金で止めてあつたに過ぎないものであつたこと、右車庫の東隣にはバラツク建の道具いれの小屋があつて、右自動車の鍵は右バラツク小屋に置いてあつたもので右小屋の扉には南京錠があつて、夕方大工等が仕事を終り道具類を入れた後は施錠することになつていたところ、被告坂本一衛は事故当日仕事終了後右小屋に施錠がされていたので裏側の板を外して小屋内に入り自動車の鍵を持出し、かつ自動車々庫の扉の針金を外して自動車を外に出して、無断で運転練習をするため、これを道路上で運転するうち、本件事故を起したものであることが認められる。

ところで、このように被告会社に運転手として雇われたものでない被告坂本一衛が被告会社の仕事終了後格納された自動車を勝手に引出して運転中に惹起した本件事故を被告会社の事業の執行に付きなしたものといいうるかである。たとえ就業時間外でありまた自動車運転を担当業務としない従業員が無断で被告会社の自動車を運転していても外形上は被告会社の従業員が雇傭主の業務として自動車を運転しているのと少しも異らないのであるから、かかる場合に他人に加えた不法行為による損害は加害者が使用主の事業の執行につき加えた損害として使用主においてその賠償の責任があるものとするのが相当であるから、被告会社は被告坂本一衛が原告に加えた前認定の損害を被告坂本一衛同様賠償すべきである。(喜多勝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!